TVアニメ『ACCA13区監察課』公式サイト
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朗読音楽劇『ACCA13区監察課 Regards,』
公演レポート

2020年11月8日、舞浜アンフィシアターにて、朗読音楽劇『ACCA13区監察課 Regards,』公演が開催された。本公演は2019年10月、台風の影響で中止となり、無観客での映像収録のみ行われた公演を改めて観客に届けようと再演に至ったもの。スタッフ&キャストが再結集した一夜限りのリベンジ公演だ。さらに今回は、全国の映画館でのライブビューイングと、インターネットでのライブ配信も実施。多くの観客が、キャストによる生朗読×アーティストとACCAバンドによる生演奏のステージを同時に楽しめる環境が用意された。

冒頭で流れるのは、OVA『ACCA13区監察課 Regards』で描かれたACCA新体制1周年記念祭についてのニュース音声。今回の構成は、本公演と連動するOVAの映像を組み込んだ「完全版」となっているのが大きな特徴だ。
ACCAの“今”を見せたところから時間は遡り、ステージにはシュネー役の悠木碧さんとアーベント役の上田燿司さんが登場。アニメでも名シーンのひとつである、シュネーとアーベントの“永遠の別れ”が静かに語られる。そして、シュネーの心情に寄り添うかのように、結城アイラさんの劇中歌「It's my life」がドラマの余韻を彩る。

シュネーと別れたアーベントは、のちにACCA本部監察課課長のオウルとなるが、その変遷は続くシーンのパインとの語らいで描かれていく。一年前のクーデター騒動の裏で、人知れずやりとりがあったオウルとパイン。『Regards』の陰のキーパーソンともいえる二人のドラマを、上田さんとパイン役の安元洋貴さんが時に軽やかに、時に重みを含んだ芝居で、じっくりと聴かせる。

一方、その頃のジーンとニーノは――。
ジーン役の下野紘さんとニーノ役の津田健次郎さんがステージの両サイドに立ち、ACCA本部監察課副課長であるジーンと、“役目”から解放され自由に生きるニーノの変わらぬひとときが語られる。ロッタの様子が気がかりなジーンとの他愛ない会話で、ニーノは三人で動物園へ行った時のことを思い出す。幼いロッタとの可愛らしくも微笑ましいやりとり。その中で下野さん、津田さん、悠木さんはそれぞれに、過去の彼らと当時を振り返る今の彼らを巧みに切り替えながら演じていく。

結城アイラさんが歌う「ペールムーンがゆれてる」で一旦幕を閉じると、場は再びオウルとパインのシーンへ。二人は在りし日の5長官を思い出す。
ここで、グロッシュラー役の諏訪部順一さん、リーリウム役の遊佐浩二さん、パスティス役の緑川光さん、スペード役の大川透さん(※声のみの出演)が揃い、そこに安元さんが加わると、回想で「とある日の5長官会議」が描かれる。個性豊かな彼らの議論は、噛み合うこともあれば、噛み合わないこともあり…。落ち着いた佇まいの中にもわずかな緊張感が含まれたやりとりを、5人のキャストが安定感のある芝居で紡いでいく。

そんな5長官のエピソードで注目を集めたのは、クーデター騒動以来の再会を果たしたというグロッシュラーとリーリウムのシーンだ。今の二人は、互いにどんな本心を抱いているのか…? その会話を聞き逃すまいと、観客も耳を澄ましているかのような静けさが会場に満ちる。そして、リーリウムが再び口にする、あの名ゼリフ――。ACCAの中枢にいた男たちのドラマは、最後にONE Ⅲ NOTESが歌うOVAの主題歌「Our Place」で締めくくられた。

パインとオウルのエピローグを経て、ステージには再びONE Ⅲ NOTESが登場。演奏するのは『ACCA13区監察課』のアニメを語る上で欠かせないOPテーマ「Shadow and Truth」。今回、メンバーのFoggy-Dさんは海外からの映像による参加となったが、エッジの効いたハイテンションなラップで、ボーカルのPONさん、ベースでACCAの全楽曲を手がける高橋諒さんと共に熱いパフォーマンスを披露した。

ラストは、いつものバーで落ち合うジーンとニーノの語らい。1周年記念祭も無事に終わり、ジーンはロッタのことを考えつつ、改めて自分自身とも向き合う。それはニーノも同じく。これからも思い思いに生きていくであろう二人のやりとりを、キャラクター同様に名コンビとなった下野さんと津田さんが、最後まで息の合った芝居で魅せた。

終幕後、キャスト一同が再びステージに並び、観客へ向けて今回の公演への思いを語った。映像収録のみの前回公演ではこうした機会もなかったため、ようやく観客の前で『Regards』を披露できた喜びを、それぞれが口にした。
TVアニメ、OVA、朗読音楽劇と展開してきた一連のシリーズは本公演でひと区切りを迎えるが、『ACCA13区監察課』という作品への思いは、より一層深まっていく。この場にいた誰もが、そう感じられる一夜となった。